うなぎ掻き漁で実際に使われていたという、鉄製の「鰻鎌」「うなぎ掻き」、またの名を「ウナギ捕り」ともいいます。川底に身を潜める鰻を引っ掛けて捕獲した古道具です。先端の角のような鈎にはバリエーションがあり、一本だけのもの、二本のもの、本出品のように3本以上のものもあります。また、山繭蛾の触覚のように伸びた柄にも、真っ直ぐに近いものから、緩やかにカーブを描くもの、クイっと大きく曲がるものまで、微妙な変化があります。いずれも巧まざる美しい線を持っています。東京・目白に2020年まで、古道具・坂田というお店がありました。店主の坂田和實さんは、囚われのない自由な眼で、世界中から美しいものを招来する天才でしたが、この「鰻鎌」も、はじめは坂田さんが見出して、世に紹介したものの一つでした。「工芸 青花」（新潮社刊）19号は坂田さんの追悼特集を組んでいますが、その表紙には、写真8のように、「うなぎ取り（坂田さんはこう表記しています）のシルエットが刻印されています。さて、本出品ですが、産地は不明です。時代は江戸後期〜明治頃のものと思われます。赤錆をうっすらと浮かせた古鉄が美しく、気になるダメージもありません。ただ、坂田さんが著書の中で掲げたものに比べると、やや頭が重たい印象です。好悪の分かれるところだと思います。持ち手に荒縄が巻かれたままのものは非常に珍しく、おそらく漁師の納屋にでも掛けてあったのでしょう。ともあれ、めったに市場に現れない珍品です。ご理解のある方にお譲りしたいです。サイズ：L.約60cm#アンティーク#古道具#坂田和實#古美術#骨董種類···その他主な素材···鉄